スクリーンに青い緞帳が映し出され、それが左右に引かれると、タイトルがキラキラ輝いて現れる。それは、この映画が憧憬してやまない'30年代──古き良き時代の映画の幕開けでもある。
きらびやかなネオンが連なる向こうには小高い山。町を一歩はずれると柔らかな砂丘に静かな風が舞う──ここはラスベガスの町。
独立記念日を明日に控え、町は普段にも増して活気づいている。とある旅行代理店のウィンドーの中ではフラニーがディプレイに忙しい。一段落着いて奥のオフィスに戻ったフラニーは同僚のマギーとおしゃべりしながら鏡を覗き込んだ。、オーバーラップして鏡に映ったのはハンクの薄汚れた顔。彼は郊外にある自動車修理工場で働いている。
2人は一緒に住み始めて5年目。そして今日は2人の出会いの記念すべき日なのだ。が、バックに流れる歌の詞のように、どうやら2人の中はしっくりしていないらしい。それでも気を取り直してフラニーはボラボラ島行きの航空券をプレゼントした。お返しに、やっと買い取った家の権利書を取り出すハンク。フラニーは平凡な毎日に飽き飽きしているのに、ハンクは落ち着いた生活を望んでいる。そんな性格の不一致は、ほんの些細なことでも口ゲンカを引き起こし、この日、とうとうフラニーは家出を決意した。ハンクは心ではひきとめたいのに、つい、口では捨て台詞を吐いてしまう。フラニーはマギーの家にころがり込み、一方ハンクはさっきのケンカでフラニーがキスしたことがあると言った親友モーの所へどなり込むというありさま。
そして翌日。いつものようにウィンドーの飾りつけをしているフラニーに、レイと名乗る男が話しかけてきた。レストランでピアノを弾いているというレイの巧みなクドキ文句に、フラニーはもうメロメロ。同じ頃、モーと一緒に街に出てきたハンクは、広告の撮影していたサーカス一座の踊り子ライラの美しさに目を奪われていた。彼女が取り出したタバコに火を付けてやるハンク。その耳もとに彼女はその夜のデートの誘いをささやきかける。
髪にパーマをかけ、思いっきり派手なドレスを着込んだフラニー。レイの働くレストランへと勇んで出かけたが、アドレスを書きつけたマッチを通りすがりの男にやってしまい、当てもなくうろつくばかり。疲れ果てて飛び込んだ店で目の前に現れたのがレイ。彼はこの店のウェイターだったのだ。手を取り合って店を出るレイとフラニー。いつしか人気のないバーに入り込んだ2人は、情熱的にタンゴを踊り、そのまま沿道へと飛び出して、道行く人を巻き込んで今度はディスコ・ダンス。そんなフラニーとレイの前を、大きな荷物をかかえてハンクとライラが通りすぎる。
サーカスを抜け出してきたライラは、ハンクと共に修理工場へとやってきた。得意の玉乗りや綱渡りを披露するライラ。やがて2人は狭い車の中で夜を明かす。一方、フラニーもレイの住むモーテルのベッドの中。
一夜明けて──。ハッと我に返ったハンクはフラニーのことが俄然心配になり出した。本当に愛する人はフラニー一人と気づいた彼は、ライラを置いてフラニーを捜し始める。ようやく見つけたと思ったらそこは先刻のモーテル。屋根づたいに侵入しようとして、ベッドの上に墜落するというドジなハンクだが、それでも何とか裸のフラニーをかついで連れ戻すことに成功した。しかし、フラニーはレイと一緒にボラボラ島へ行くといってきかない。必至にとめるハンクに一言。「彼は私に歌を歌ってくれるわ」。去ってゆく彼女にハンクは「俺だって歌いたいけど、歌えないのさ」と切なく語りかけるのだが……。
ボラボラ島へ出かけるレイとフラニーの後を追い車を飛ばしてマッカーラン空港へとやってきたハンクは、機内に入ろうとする彼女に戻ってほしいと懇願する。そして思いのたけを込めて歌うのだった。“♪You Are My Sun-shine ......” しかし彼女の決心は固い。傷ついたハンクは一人、雨の降りしきる駐車場へと引き返してきた。その頭上を、フラニーを乗せたジェット機が飛び去っていく。
真暗な部屋の中で、ハンクはフラニーの思い出の品々を焼こうとしていた。突然、明かりが灯った。振り返ったハンクの目に映ったのは鞄を下げたフラニーの姿。やっぱり戻ってきてくれた! 幸せそうな2人の顔に歌がかぶさる。「♪あなたに捧げよう、心からのこの想いを……」 そして画面の左右から緞帳が引き戻されて──幕。