「悪魔の墓場」と呼ばれるテキサスの砂漠を歩き続けている男がいた。水を求めて入ったガソリン・スタンドで倒れ、収容された病院からの連絡で、ロスに住む弟のウォルトがやってくる。男の名はトラビス。四年前に一人息子のハンターを置いて失踪していたのだ。
言葉を忘れたかのように無言で、目を離せば黙っていってしまう兄をウォルトは家に連れ帰ることにする。ロサンジェルスへ向かう車の中でトラビスはボロボロになった写真を見せ、初めて口を聞く。「パリ……」──フランスのパリではなくテキサス州のパリ。そこに土地を買ったのだというが、その写真には荒れ地が写っているだけだ。
ロスではウォルトの妻アンヌとスッカリ大きくなったハンターが2人の帰りを待っていた。アンヌは我が子のように可愛いハンターをトラビスが連れ去るのではと不安になるが、昔の8ミリを映すと、幸せそうなジェーンの笑顔に思い沈むトラビスをみて、今でもジェーンからハンター宛に送金があること、それは決まって毎月五日、テキサス州ヒューストンの銀行からであることを打ち明ける。
あと数日で五日になる。トラビスはジェーンを捜す旅に出ようと決意する。突然現れた父に初めは馴染めなかったハンターも、今ではうちとけて、一緒にママを捜す旅に出るという。ハンターからの電話でふたりが行ってしまうと知り、ハンターを失う寂しさに打ちひしがれるアンヌ。ヒューストンの銀行前で待ち伏せたふたりは、運よくジェーンの車をみつけ、彼女の行き先をつきとめた。トラビスはハンターを残してジェーンの消えた建物に入っていく。
そこは・キー・ホール・クラブといい、2階はキャバレー、1階には客が女とマジック・ミラーを隔てて話ができる個室が並んでいた。ジェーンは姿の見えない客の相手をして暮らしているのだった。思いがけない再会。その夜、にがい酒におぼれるトラビス。
翌日、再びキー・ホール・クラブに行ったトラビスは、マジック・ミラー越しにジェーンにある男女の話を始める。その話を聞くうち、ジェーンは姿の見えない客がトラビスであると知る。涙がとめどなく流れおちた。それは愛が深いほど互いを傷つけずにはおかない、修復不可能な愛の悲劇であった。トラビスの教えたホテルの一室で、ジェーンはハンターを抱きしめる。その姿を遠くにみて、トラビスは静かに去っていくのだった。