ターミナル・ベロシティ







製作: スコット・クループ
トム・エングルマン
監督: デラン・サラフィアン
脚本: デビッド・トゥーヒー
製作総指揮: テッド・フィールド
デビッド・トゥーヒー
ロバート・W・コート
共同製作: ジョーン・ブラッドショー
撮影監督: オリバー・ウッド
プロダクションデザイナー: デビッド・L・スニーダー
編集: フランク・J・ウリオステ
A.C.E.
ペック・プリオール
視覚効果: クリストファー・F・ウッズ
衣裳: ポッピー・キャノンリース
音楽: ジョエル・マックリーニー
キャスティング: テリー・リーブリング
出演: チャーリー・シーン(ディッチ・ブロディ)
ナスターシャ・キンスキー(クリス・モロー)
ジェイムズ・グンドルフィーニ(ベン・ピンクウォーター)
クリストファー・マクドナルド(キアー)
ガリー・ブロック(レックス)
ハンス・アール・ハウズ(サム)
メルビン・バン・ピーブルス(ノーブル)
サリー・マクローフ(ロボカム)
キャサリン・ディ・プローメ(カレン)
リチャード・サラフィアン・ジュニア(ドミニク)
製作会社: ハリウッド・ピクチャーズ
公開: 1994年アメリカ。
日本公開1995年。
(ブエナ・ビスタ・インターナショナル・ジャパン配給)
カラー、102分。




INTRODUCTION

全米で大ヒット! 「逃亡者」のデビッド・トゥーヒー脚本。
「ダイ・ハード2」のオリバー・ウッド撮影。超大型サスペンスが遂に日本上陸!

真っ赤なキャデラック・アランテ・コンパーチブルが、飛行中の軍用機のドアを突き破って飛び出した──そこは、地上15, 000フィートの上空。風速200mの突風が吹き荒れる中、キャデラックは物凄い勢いで落下する。運転席にいるのはリチャード“ディッチ’ブロディ。スカイダイバー。大きな男がボンネットにしがみついて、ディッチを狙っている。男はロシア・マフィア。車は、すぐに地面に激突するだろう。時間がない。確実な死が待ち受けている。殴りかかる男を、ディッチは大空の彼方に振り切った。車の外を回って、トランクのキーを開けた。閉じ込められていた女を引っ張りだすと、2人の体が浮き上がった。その瞬間、キャテラックが大地に激突。3回、爆発した。同時に、女を抱きしめたディッチのパラシュートが開いた。が、爆発の炎が、パラシュートを−瞬のうちに焼き尽くす。「!!」2人は谷底へ墜ちていく。女は死を覚悟した。と、ディッチの予備パラシュートが開いた。だが、地上には‥・!?

危機また危機の連続に“手に汗握る”なんて表現ではとても足りない。握った汗が本物の恐怖のヒヤ汗に変わる、超大型ハイパーソニック・スカイ・サスペンスアクションの登場だ。

スカイダイビングのA級インストラクターが、ロシア・マフィアの陰謀に巻き込まれ、拉致された旧KGBの女スパイを命懸けで救出する、というストーリー設定からして、そのアクションのスケール度の高さが予測できる。「ダイ・ハード」が超高層ビルで「クリフハンガー」が大絶壁で観客を魅了したが、あの“高低差”を駆使したアクションを、さらにスケール・アップして、なんと15,000フィートもの上空と地上とを舞台に繰り広げるのだ。

先述のクライマックス=映画史上初の270km/hの車もろともの大落下シーンを始め、映画冒頭の華麗なパフォーマンス・スカイダイビング、アクロバット復葉機から軍用機C−123Bへと高空で飛び移る決死のスタント・シーンと、スカイ・アクションが盛り沢山なら、地上でも、ロケット・エンジン搭載のテスト機で地上を疾駆する逃走シーン、“バットマン”よろしく、銃弾の雨の中、パラシュートで夜の秘密工場を飛来するなどなど、息詰まるアクション・シーンが次から次へとノンストップで展開。まさに息つく暇のない“緊張の連続攻撃”だ。

注目の主人公は、現在ノリにノッているチャーリー・シーン。デビュー以来、数々のヒット作で主演をこなしてきた彼も、この作品で初めて本格アクションをこなし、押しも押されぬA級アクション・スターの座に名を連ねた。ヒロインにはアクション映画初挑戦ながら、堂々旧KGBの女スパイを演じきったナスターシャ・キンスキー。いつもながらのミステリアスな雰囲気に加え、アクティブな演技も達者なところを見せてくれる。

一方、監督は最近アクション路線でメキメキ実力を発揮し始めたテラン・サラフィアン。ジャン=クロード・バン・ダム主演の刑務所アクション『ブルージーン・コップ』のヒットが記憶に新しい。また、脚本はハリソン・フォードの『逃亡者』で絶賛を浴びたデビッド・トゥーヒー。さらに、撮影は、『ダイ・ハード2』のオリバー・ウッド。と、揃いも揃った一流の顔ぶれ。また、アクション映画の歴史に残る一級品が登場した。





STORY

15000フィートの高空から、砂漠の大地へ真逆さま!  270m/hのスリルとサスペンスが爆発する起大型ハイパーソニック・スカイアクション!

リチヤード“ディッチ”ブロディはアリゾナ州フェニックスの一流スカイダイビング・インストラクター。ある日、そんな彼のもとに金髪の美女が訪ねてきた。「スカイダイビングは初めて」という彼女の名はクリス。その美貌にすっかり気を許してしまったディッチは、訓練もそこそこ、スグにでも飛びたいという彼女の無理をOKしてしまう。しかし、降下ポイントに向かう飛行中、ディッチが目を離した一瞬に、何とクリスは開いたドアから空中へ!慌ててディッチも後を追うが時すでに遅く、彼女は地上に叩きつけられた…。

殺人容疑をかけられたディッチは、自ら真相を探ろうと彼女のアパートを訪ねる。そこで彼が見たものは、彼女がパラシュート熟練者であった証拠の写真。さらに突如、背後から暴漢が襲いかかり「死体はどこだ」と叫んだ!危うく難を逃れたディッチは深まる謎を糸口に、事故の瞬間を収めたビデオを検分する。すると、落下するクリスの上空に見知らぬ飛行機が。もしかしたら落下したのはクリスではなく、暴漢の言う死体なのでは…!?

謎の飛行機を追うディッチは、遂に寂れたガソリンスタンドで死んだはずのクリスを発見した。仕方なく、自分がCIAであり、事故は偽装工作だったと告白するクリス。事件解決後、彼女に生存証明をしてもらいたいディッチは協力を約束することになった。その夜、とある工場に潜入した2人はCD−ROMを入手。しかし、遅れて到着した敵の銃撃を受け、逃走はバラバラになってしまう。そして、再会したその場所もすでに敵が察知。包囲され、激しい銃撃を浴びせられた2人は、砂漠の廃屋にやっと逃げ込んだ。命懸けで協力してくれるディッチに、真の信頼を寄せはじめたクリスは遂に真相を告白した。一わたしは旧KGBの工作員で、ロシア・マフィアの密輸事件を追っている──と。

CD−ROMを読み取った2人は、砂漠の飛行場に放置されているボーイング747が密入国機であることを知り、その機内で大量の金塊を発見する。再び襲ってくる敵一味からは何とか逃れたものの、いつまでも事件が解決しないことにイラつくディッチは、クリスにケンカを仕掛けてしまった。「オレの殺人容疑はいつ晴らしてくれるんだ!」傷つきたった一人で行動を再開したクリス。だが、ディッチはそんな彼女をもう放ってはおけなかった。急いで後を追い、飛行場で彼女が拉致されるのを見たディッチ。彼女をトランクに押し込んだキャデラックを積んで離陸する軍用機を、急遽チャーターした復葉機で追跡。軍用機に接近し、複部格納口から飛び移った彼は、そのままエンジンスタート、地上15,000フィートの高空から車もろとも空中に飛び出した!なかなか開かないトランク!加速する落下速度!迫り来る大地!死が目前の恐怖のスカイダイビングから、果してディッチはクリスを救出できるのか──!?





PRODUCTION NOTES

スポーツ好きの情熱を脚本にフルに投入!

『逃亡者』の大ヒットで一躍名を馳せた脚本家のデビッド・トゥーヒーは、その創作意欲が冷めぬうちにと書き上げた新作を、ハリウッド・ピクチヤーズに持ち込んだ。トゥーヒー自身が語るように「スポーツと書くこと、私の好きなものを情熱をこめて合体させた」という物語は、すぐさまプロデューサーのお気に入りに!「最初から最後まで素晴らしいアクションの連続。しかも、2人の主人公の綿密な人間ドラマになっている。つまり大作になる要素があふれていたんだ」

主役は監督の一声でチャーリーに。

当初、主役の候補にはトム・クルーズやマイケル・ダグラスらの名もあがっていた。しかし、脚本を読んだサラフィアン監督はいかにもアメリカ的な熱血漢“ディッチ”役に迷わずチャーリーを選んだ。「彼に才能があることは知っている。この作品にはそれに加えて『プラトーン』や『ウォール街』で見せてくれた彼のドラマチックな演技が絶対に必要だったんだ」とのこと。当のチャーリーも「いつものアクションだと思っていたが、撮影していくうちにこの映画が偉大な作品になると確信しはじめたんだ。ボク自身、観客として存分に楽しめるよ」と監督に賛辞を呈した。

ドラマの質を決定づけたナスターシャ。

旧KGBの女スパイという役柄は、ナスターシャの実像とはまったく異なる奇抜な配役だった。しかし、女優として円熟味を増し、天性のミステリアスな雰囲気と秘められた熱情を見せた彼女は、祖国と家族に愛情を注ぐ諜報員を、見事ドラマチックかつアクティブにこなしてみせた。プロデューサーのクルーフは彼女を起用した監督の思惑をこう語る。「彼女のおかげで素晴らしい人物像が描けただろう?監督は彼女を起用しただけで他のスタッフやキャストに、この作品が単なるアクションじゃないことを一発で理解させたんだ」

ライブ・アクションに一流スタッフが結集!

プロデューサーのクルーフは、はじめこんな危惧を抱いていた。「これだけのアクションを描くとなれば危険も多い。やはリSFXや特殊撮影に頼るばかりの“ハリウッドの魔法”にするしかないのか」しかし、航空コーディネーターからスタントコーディネーターまで、集められたスタッフは一流の経験を持つ優秀な人材ばかり。彼の心配も、実際の危険も乗り越え、可能な限り肉体を使った迫真のアクションと撮影を実現してしまった。もちろん、必要箇所にはSFXや特殊撮影を最小限かつ効果的に活用したが、すべてライブ・アクションの引き立て役に徹している。派手な視覚効果の“魔法”に頼らない真のアクション超大作が誕生した。

圧巻の降下シーンは撮影スタッフの大手柄!

飛行機から落下するのは熟練したスカイダイバー(スタントマン)だけではない。経験のない撮影スタッフも迫真の映像を撮ろうと練習を重ね、自ら降下した。その上々の成果を讃えてクループは言う。「どの撮影がもっとも危険だったかなんて言えないよ。空飛ぶ飛行機からクルマを落とす、スカイダイバーたちが空中でクルマの周囲を飛ぶ、風車の農場のド真ん中に降下したり超低空飛行をしたり…。映画のためにはこれらすべてが必要だったんだ。そしてそのすべてが素晴らしい結果をもたらしてくれた!」





REVIEW / NOTE

ヒーローを導く知恵と勇気の女神 ── 田中千代子(映画評論家)

スカイダイビングのアクション映画に「テス」や「パリ、テキサス」のナスターシャ・キンスキー???

この意外性がデラン・サラフィアン監督の狙いだった。「ターミナル・べロシティ」はただのアクション映画ではない、人間ドラマだという自負。ナスターシャの登場で娯楽一辺倒になりがちなアクション映画に文芸的な香りがもちこまれる。青年時代にヨーロッパで映画修行したサラフィアン監督らしい発想だ。

ナスターシャはフランシス・フォード・コッポラ監督の「ワン・フロム・ザ・ハート」などアメリカ映画にも出演しているが、やはりヨーロッパの女優である。父親は怪優にして名優の故クラウス・キンスキー。ポーランド系だが、ドイツ、イ々リア、フランス等の映画で活躍した。ナスターシャも父に劣らず、活動の範囲が広い。英・仏・独・伊など数力国語を自由に操る知性派でもある。頭脳明晰で咄嗟の判断力と勇気が要求される旧KGBのクリス役はまさにうってつけ。

このナスターシャに振り周されるタフガイにチャーリー・シーン。空の目立ちたがりや、スカイダイバーのディッチを気持ちよさそうに演じている。

ディッチは運動神経とセックスだけの男である。クリスに出会って、事件に巻き込まれるまで彼は何も考えたことがなかったのだろう。晴れた日の空のようにわかりやすい男だ。正義感とか使命感といったこととも無縁で、唯一あてはまるのは自己本位の思想。善悪・正邪以前のプリミティヴな領域で幸せに空をダイビングしていたディッチ。

ところがその空で彼は激しいショックを経験する。彼の生徒になったスカイダイビング初心者のクリスが真っ逆さまにおちていくのだ。パラシュートは開かず、どんどん地面に近づいて、大惨事。一体何があったのか。この暗からディッチはものを考え始める。が、まだ自己本位の段階だ。事故のからくりと背後の事情をクリスが説明し、彼に協力を求めた時にディッチの次の段階が始まる。公けの正義のために、人々の平和のために献身できるか、否か。

ディッチはいかにも単純明快なアメリカ男だが、物語の展開にしたがってどんどん精神的な成長をとげていく点では教義小説の主人公のようでもある。わがままな彼を導くのは聴明なクリス。彼女は知恵と勇気の女神、あるいは森の精霊といったらいいだろうか。

ナスターシャが初めて出た映画はヴィム・ヴェンダース監督の「まわり道」である。この時彼女はまだ十三歳だった。主人公は自分の道を求めてさすらいの旅をする青年。典型的な教養小説の主人公像である。この映画でのナスターシャは口のきけない少女の役だった。ヒロインではないが、主人公に鮮烈な印象を与える重要なキャラクターである。代表作の「パリ、テキサス」でもナスターシャはそこに存在(あるいは不在)しているだけで男たちに強い影響を与える女性を好演した。

今度のクリス役ではそうしたイメージをそっくり引き継いだというより、そのイメージを爽やかに残しながら、ミステリアスであるよりは堅実なヒロイン像を目指している。

空と荒野しかないアリゾナ州フェニックスのスカイダイビンクの教習所に現れたクリス。金髪がまぶしい華やかな美女だ。ディッチはたちまちとりこになる。スカイダイビングした後でデートすることを彼はすぐ考えたのだろう。心のウキウキが顔に出る。多分これがいつものディッチの行動パターン。教習所のなかでも女性の同僚たちはハンサムな彼に優しい。そうした環境でディッチはわがままいっぱいに生きてきたのである。

ところが不慮の事故。どうも変だ。殺人容疑までかけられたディッチは真相究明に乗り出す。これもわが身可愛さから出た行動である。クリスが生きていることを発見したディッチは身の潔白を証明することだけを考える。そのためまんまと敵の罠にはまり、クリスとともに命がけの脱出。この時ふたりは運命共同体になるのだが、それもすべてクリスのせいだとディッチは文句ばかり言う。彼のわがままは実に子供っぽい。だが、そこがチャーリー・シーンの魅力。

端正な顔立ちときりりとした目元がオーソドックスな美男子然としているチャーリー。その彼があたり前の正義のヒーローを演じたりしたら、似合いすぎて面白くない。自分勝手な未熟者、それがいい。

オリヴァー・ストーン監督の「プラトーン」以来チャーリー・シーンが演じてきたのは、「メジャー・リーグ」でも「ウォール街」でも成長途上の若者である。まだ大人になりきらない若者か年配の男に導かれるというのがジョン・ウェインの西部劇でもよく見られたアメリカ映画の伝統だ。若い女性が登場しても彼女たちは年配の男ほど強い力を及ばせない。ヒロインはあくまで愛の対象として若者が成長するのを待っていなければならなかった。

ところが今や時代はフェミニズム。わざわざ年配の男の助けを借りる必要はない。わがままで未熟な若者をヒロインがどんどん導いていってもよいのである。

クリスは頭脳といい、行動力といいディッチに抜きん出ている。勇気も責任感もある。旧とはいえどもKGB。立派な国家公務員である。そのプロフェッショナル倫理からかつての同僚がロシア・マフィアとなって世界に害をなすのを防ごうと孤軍奮闘。そのプロ意識がディッチを巻き込み、結果ディッチも精神的に大人になり、敵につかまったクリスを救出する。

ナスターシャのヨーロッパ的な美徳が、成長する若者というアメリカ映画の伝統と素敵な出会いをしたアクション映画である。





LINK

Terminal Velocity (1994) … iMDbによる詳細データ(英語)