ナスターシャ・キンスキーの回想

アヴェドン氏とこの神秘的とも言える瞬間を捕らえた日のことを覚えていますか?

ええ、あれは1981年のニューヨークでのことだったのだけど、正確な日付けまでは覚えていないの。私は20歳だった。アヴェドンとは既に一緒に仕事をしたことがあって、3回目に会ったその日に私たちは『ヴォーグ』誌の表紙撮影をしようとしていたんだけど、彼は雑誌側が用意した衣装がとにかく気に入らなかったのね。彼は考えを巡らせて、猿やら蛇やらとにかく考えつく種類の動物を連れてこさせた。ちょうどそのときに私が出演した映画を彼は観ていたの。黒豹の出てくる『キャット・ピープル』をね。動物と私との有機的な関係を示しつつ、豹とは違う何かとそれを試したかったということみたい。

最終的に蛇になったのはあなたのアイデア? それとも彼?

どういう経緯でああなったのかもちょっと思い出せないの。議論と試行錯誤を行った結果、と私は信じているのだけど。はっきりしているのは、蛇とのイメージだと私は服を着るのを想定できなかったということ。全く予想だにしなかったやり方で、あんなふうに簡単にすべてをやり終えたの。だけど私は全てをアヴェドンに委ねていた。

蛇があなたの肌に触れたときの感触を覚えていますか?

撮影の間じゅう私が動きまくってたとミッシェルが言ってたんでしょ。でもあの日は、私は1インチも動かなかったと断言できるわ! 私のどんなに小さな動きにでもあの蛇は反応しようとするのを知っていたからね。蛇の動きはとてもゆっくりなの。非常に張りつめた空気だった。蛇と一緒にいるとそんなことまでわかるのが信じられなかったわ。私はほとんど、その蛇を聖書に出てくるような、時間の境界からやってきた動物のように感じていた。

撮影には時間がかかりました?

ええ、その日の夜まで1日じゅうかけた撮影だった。その間ずっと、アヴェドンはとても落ち着いていたわ。捕らえようとする瞬間がおとずれるのを待って、そしてその瞬間だと思ったとき、「イエス」と言うの。ミッシェルとソーニャもまさにそうだった。

アヴェドン氏とのこの撮影はあなたの人生を変えましたか?

この写真が私に力を与えてくれたと思うし、ソーニャにも同じように感じてほしいと思っているわ。この写真は私にとって、視覚的な自由、創造と確信の強烈な瞬間、そして一人の写真家とそのモデルとの驚くべき関係を象徴したものでありつづけるでしょうね。

あなたの考えでは、この写真が人々の目に訴えるものとは何でしょうか?

言葉にするのは難しいけれど、私はこれを女性に向けたものだと思っている。女性として、母親として、女優として、自分の体をコントロールする力や勇気といったイメージを伝えていると思うわ。

アヴェドン氏とあなたの関係はどうでしたか?

私が若かったときは、自分が信頼のおける人たちと仕事をするのが非常に重要なことだったの。私たちはほとんど話をしなかったけど、彼といると安心できたし、創造的になれた。私たちは完全に理解しあっていた。そんなことって滅多にないことだけど、私は何人かとそういった状況で 仕事ができたし、今でもそういうことがあるわ。

あなたの娘、ソーニャで同じ写真をリメイクしようと思ったのは?

同じ写真をリメイクすることになるのをソーニャも私もわかっていたの。この写真が見本になるだろうということはわかっていたんだけど、 どうやって同じものを作るのかということはわかっていなかった。 私がこの撮影を行うには、インディペンデントな行動をあえて起こさなければならなかったの。この17歳の娘の写真は私に、今現在の彼女なりの人生観や女性としてのビジョンを示すものになったわ。鷹との写真は特に、そういう力を持っている。私はこの誇り高き瞬間が、彼女の将来の子供たちと家族で振り返るものになってほしいと願っているの。ソーニャが小さい頃に私に言ったようにね。「ママ、こんなことをママがやったなんて信じられない、素晴らしいわ!」って。

Nastassja / Sonja Interview

ソーニャ・キンスキーの告白

ソーニャ、今回が最初のモデルの仕事ではないよね? 私たちは既にKookaïで、ピーター・リンドバーグによる片田舎の撮影で君を見たことがある。

ええ、ピーターと仕事をする前にも14歳の時に『マリ・クレール』の表紙をやったりしているし、トミー・ヒルフィガーとの仕事で公の場に出たりしているけど、たくさん仕事をしているわけではないんです。ほんと言うと私はモデルではなくて、いつでも楽しいからそういうのをやってきただけであって、キャリアを積もうとかの野望はないんですよ。この美の世界で、そういうのは私の得意分野じゃないし、でも面白い人たちと仕事するのは大好きだから。ピーターとの仕事は素晴らしい経験で、信じられないぐらい楽しかった。そして、今日のミッシェル・コントとも、本当に素晴らしい経験ができました。今日"Michel Comte 20 Years"を見せてもらうまで彼の作品は知らなかったんです。本当に力強いイメージを生み出せる素晴らしい写真家だと思いました。

ママと同じ写真をリメイクするにあたって君がしたことは?

とても刺激的な経験でした。ママのこの写真は私が本当に小さいことからいつもお気に入りに挙げていたものだったんです。蛇を体中に巻きつけるということ、それは信じられないくらいに美しく、魅力的…。

撮影の前にママは君に協議の機会を与えた?

いいえ、彼女は私にいったのはただ「リラックスするためにいちばんいいのは何もしないことよ」ということだけでした。

蛇を怖がってはいないようだったけど?

全くですね、私は動物を恐いと思わないんです。たくさんの動物たちと一緒にいると気持ちが高まるし、扱い方を勉強しましたから。調整トリマーのデヴィンなんて蛇を私の体に巻き付けるとき私より緊張してたのよ!(笑)

将来の夢は何?

本当は画家とジャーナリストになりたいんです。バスキアみたいな小さな作品を描くのが特に好きで、そうすると気持ちのバランスがとれるの。大きなサイズのラフな絵を見るのも好きですね。裸婦の絵をよく描くんですけど、女性の体の流れるような曲線がとても好きなんです。今日の撮影で、自分の体にもまさにそういう部分があるんだとわかりましたね。それまでは他の人たちに対してそういうイメージを持つのに慣れていたので。

ということは、写真を撮るとしたら、興味があるのは君自身?

私はけっこういいカメラマンなんですよ。ちょうどいま、私の経験や旅、友人、ファッション、食べ物について綴ったジャーナリスティックでアーティスティックな本を作っているの。この個人的な本のために、私の絵の写真もたくさん撮る予定なんです。